『xxxHOLiC(ホリック)』の第10巻を読んだので感想を書きます。
♪ とうとう節目の第10巻! 表紙がいつにも増して豪華ですごい。貴婦人の帽子屋さんかな。侑子さんの髪に手首に纏わる真珠が美しいです。CLAMPさんは、曲線のしなやかさとつぶつぶした飾り(真珠とかビーズとか)の細やかさでは他の追随を許さない。華やかな画面、惹きつける装丁はたぶん漫画史上に残るでしょう。
♪ そして見開きカラー口絵は四月一日ひとり! おー、快挙だなー。眼鏡を手に横たわる色っぽい構図。蝶にかこまれているのは、侑子さんに護られているしるしか。
♪ 侑子さんが情報屋として再登場した猫娘にあげる「かぶると体感温度が下がって涼しく感じる帽子」。うわ欲しい、っていうかドラえもんの道具っぽいなー。エスキモードリンクとか。さりげなく猫娘のファッションに似合うデザインなのがいいな。
♪ 窓からのぞく、何日も服の変わらない女のひとの正体は、死体でした。「防腐剤の入ったものをたくさん食べているから最近の死体は腐らない」……ほ、ほんとか? 百目鬼。お寺の経験者・談みたいに書かれているから、信じたいけど、えーと。
♪ また四月一日の夢に出てきてくれる百目鬼のおじいさん。名前は遙。百目鬼の「静」という名前も素敵だと思ったけれど、おじいさんの名前もずいぶん素敵な。私、本名が地味だからこういう名前のひとを見ると、男女関わらずうらやましくてしょうがない。この漫画でいえば、「侑子」だって「ひまわり」だってうらやましい!! ……「マル」と「モロ」は微妙だ。
♪ 「これには意味があるのではないかと気付いたなら、その気付きにこそ意味がある。何故? と考えることにこそ意味がある」 遙さんの語り。この漫画は比較的わかりやすくメッセージを発信しているけれど、その根っこは「立ち止まるな」というところにあるのではないか、と私は思う。「変わることを恐れない」「出来ることを、たとえ苦しくてもやっていく」ということ。「分からない」「出来ない」という安寧の中に留まらないこと……を、強く諭していると思う。だからこそ「気付かなかったころにはもう戻れない」と、遙さんはきっぱりと言うのだ。"暗い安定の中に留まるな"とは、ニートには痛いことばだけど!
♪ 「大酒のみで、いいかげんで、だらしなくて、こきつかわれてばっかりだけど。でも、逢えてよかったと思うよ」……四月一日の述懐。10巻にして初めて出てきた、四月一日の侑子さんへの気持ち。思えば、若い男女でありながら恋愛感情をはさまずに、こういう穏やかで力強い信頼関係を築けた彼らは素晴らしい。やー、恋愛もなにも侑子さんは(たぶん)若くはないし、四月一日の家族であり手厳しい指導者のようなものだとは思うけれど。
♪ 「関係」で思い出したけれど、侑子さんとクロウ・リードとの関係も恋愛ではないよね? きっと。侑子さんは「嫌なやつ」と言っていたけど、信頼しあえるライバルのような関係かな。以前(3巻?)「四月一日はいい子よ……クロウ」とつぶやくシーンがあったけど、この先、四月一日の運命にはクロウ・リードも関わるのか。
♪ 吉運を呼ぶ風船を小羽にあげてしまう四月一日。心がきれいなのはもとからだけど、そこに強さも加わった最近の四月一日はとてもいいな。
♪ 第10巻最大の、そして10巻を通して最大の山場ともいえる「ひまわりちゃんの種明かし」。それは四月一日の窓から落下事件で幕を開ける……って、2階でしたか。もっとこう高層階からの落下だと思ってハラハラしたです。いや生きてなきゃ話にならないけど。死の淵から四月一日を救ったのは亡き両親の想いと、遙さんでした。……そしてそして。とってもCLAMPらしい、満面の笑顔で「やっと気付いた?」のひまわりちゃん。「あたしと一緒にいると、嫌な目にあうの」。両親以外の全ての存在を不幸にしてしまう呪われた人間(アヤカシではなかった)。けれども、それはひまわりが望んだことではないし、彼女自身も深く傷ついている事だった。だから、この告白をしているあいだ、ひまわりはにっこり笑ったままで、表情を変えない。「さよなら。」と最後まで笑って去ろうとした。そんなひまわりに「びっくりさせたお詫びに何か作ってあげたい」と引き止める四月一日。「ひまわりちゃんと会えてほんとうに幸せだよ」と告げる。「イチゴのシフォンケーキ」をおねだりして、これからも側にいることを確信して部屋をでるひまわり。……この"おねだり"があってよかったと思う。それが『xxxHOLiC』のテーマだから。互いに係わり合い、支えあう。甘えあい、信頼しあう。自立した個人同士だからこそできる、甘え。「──ホリック(中毒)」にならない、心地よい関係。四月一日と、ひまわりと、百目鬼。これで、ほんとうに友だちになれたのだと思う。
♪ とは言え、物語の大きなおおきな謎の一つであった「ひまわりちゃんのもたらす不幸」が、単に「ひまわり個人の体質」で終わったのかどうか、すこしひっかかる。つまり、四月一日の抱えているらしい根本的な問題……アヤカシを視ることや、もっと大きなこと……と、ひまわりは無関係だったのか? そして、ひまわりに四月一日が惹かれた理由は、純粋に可愛らしさや性格のよさ? それなら他にもひまわりを好きになる人はいなかったの? ひまわりのもたらす不幸に耐え続けられたのが四月一日だけだ、ということ? 四月一日が百目鬼を嫌いな理由はひまわりに惹かれた理由と対にはなっていないの? 色々と疑問は残る。
♪ アニメの話になってしまうけど、ひまわりちゃんの声が伊藤静さんというのは合っているのかなあと疑問でした。だってタマ姉で令ちゃんでまゆき先輩だよ? もっときゃぴきゃぴな声が似合うのではないか、と。でもこの巻の、感情を抑えてひたすら微笑み続ける強いひまわりには伊藤さんは合うかも、と感じました。……たぶんこのエピソードがアニメ化されることはないけどな。
♪ 四月一日の命の対価を支払った三人。百目鬼は四月一日が流したぶんの血を。ひまわりちゃんは四月一日の背中の傷跡を引き受ける。そしてもうひとりは……9巻で店に現れた小狼そっくりの片目の誰かさん!? え……何それ。ていうか、誰、あれ。何の因果で四月一日にそんな。だ、大混乱だ。
♪ そして、ベッドの四月一日の前でも、部屋の外で待っていた百目鬼の前でも笑いを崩さなかったひまわりちゃんは一人になって初めて泣いた。うー、読みながら私も泣いた。強い子だ。「あたしも、会えて幸せだよ」……四月一日とひまわりの恋は、今ようやくちゃんと始まったのだと思う。
♪ ひまわりの不幸体質を治してやろうとはしない四月一日。そのために侑子さんに他人が対価を支払うことは、ひまわりの心を軽くはしないから。ただ「ひまわりちゃんにちょっとでも笑っててもらえるように、俺が出来ることをするんです」。依存せず、他人の不幸も背負い込まず、自分の足で立って支えあう。「出来ることをする」。ここにもテーマが語られている。
♪ そして、この巻のラストは、ひまわりちゃんのために産まれた一羽の小鳥。何も出来ないけれど、彼女の他者を不幸にするという影響を受けない鳥。深いなー。それは、まるで精神病の治療者のような存在だよ。というわけで、節目の第10巻は「ひまわりの巻」とサブタイトルをつけてもいいくらいひまわりなお話でした。
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