« 【漫画】花ぶらんこゆれて… 第1巻:太刀掛秀子・著(集英社文庫)(1978年作品) | トップページ | 【漫画】花ぶらんこゆれて… 第2巻:太刀掛秀子・著(集英社文庫)(1978年作品) »

2010年9月11日 (土)

【漫画】真珠とり:清原なつの・著(りぼんマスコットコミックス)(1982年作品)

clover SF漫画『真珠とり』3部作と、『私の保健室へおいで…』『胸さわぎの草むら』が収録されたコミックスです。わたしが9歳の頃の作品になります。そのころ広告を見て、『真珠とり』という神秘的なタイトルと各章タイトルの「小夜子」「華子さーん」「まりあ」というのに惹かれたんです。特に「華子さーん」happy01 なんで呼んでるの? なんで伸ばすの? 気になってしかたありませんでした。ようやく読めて、永年の胸のつかえがとれた感じです。

『真珠とり』

chick第1章「小夜子」

小夜子の夫はオキ・トキオ。宇宙船の優秀なパイロット。宇宙へ出るたびにウラシマ効果で小夜子との歳が開いてしまうのを防ぐため、小夜子はトキオが宇宙にいる間コールド・スリープをしている。学生時代3人で友人だったひとり・トダだけが、年老いていく。しかし、トキオはある時事故に遭い、全身サイボーグになってしまう。もう小夜子に会えない、死んだと伝えてくれというトキオ。

clover トダ、せつないです。ずっと若いままのトキオと小夜子に囲まれて、白髪になっていく。小夜子はトキオが宇宙に出るたびに「行かないで」と引き止めます。たとえコールド・スリープで一瞬のことだとしても、つらいんでしょうね…think トキオの全身サイボーグな様子は、映画『メトロポリス』(アニメ)のペロを思い出させるレトロフューチャー感でした。そして、死んだと小夜子には言ってくれ、というトキオにはちょっと怒るangry どんな姿でも、そばにいてくれればそれでいいと思うのに。

トダは小夜子を引き取る。「一緒に年老いてくれないか」と事実上のプロポーズをするが、小夜子はうなずかない。ある日、サイボーグとなったトキオを招いて3人で夕食を取る。偽名を名乗っていたトキオだったが、フォークでグラスの氷をつつくクセがトキオと同じ、と見破られる。トキオはあくまで別人だと言いはって帰り、アルファ・ケンタウリに向かう船団に乗り込んで地球を離れる。

clover あるある、こういうクセでばれるのってhappy01 フォークで氷をつつくクセ、というのはかなりレアですよね。サイボーグだからってなんだというのだ。また妻から逃げ出したトキオにはもっと立腹ですgawk ところで、トキオが小夜子に名乗った偽名「エンヤ・コラヤ」って…coldsweats01「トキオよね?」と追及されても「わたしはエンヤです」ってありえないわー。

トキオは人工皮膚でかなり元の姿に近い顔を手に入れて、アルファ・ケンタウリから戻ってくる。でも小夜子はもう年老いてしまっただろう、と思っていると、すっかり老けこんだトダにコールド・スリープセンターに案内される。カプセルの中で、小夜子はただトキオを待ち続けていた。

clover ひとはなぜ旅立つのだろう…それは帰ってくるためだ、というモノローグで物語は締めくくられます。しかし元とほとんど同じ顔を手に入れたなんて、つごういいなーcoldsweats01 サイボーグ顔では幸せにはなれないのですか? あと、カプセルは液体に満たされていましたが、作者さんのコマ外らくがきで「なんの液体か聞かないでください」と書いてあって笑ったhappy01 いまだったら「LCL」と言えるところですね。

chick第2章「華子さーん」

華子は夫と小さな息子のいる外交官。地球の大使として火星に単身赴任で派遣されてきた。火星では最近地球からの独立運動が盛んになっているという。歓迎のレセプションで、華子はかつての恋人・リムランドと再会する。

clover 華子さんはその名の通り華やかな美人です。火星の空がピンク色、というのは面白い設定。舞い上がる砂ぼこりのせいだそうです。スカイピンクというのだとか。リムランド(以下リム)は華子に会うなり「地球に帰りなさい」と言って、ビンタされています。強情なところはあいかわらずお互い様、な関係のふたり。今でいうツンデレ同士です。

火星は太陽エネルギーをカプセルにして地球に輸出することが産業のすべて。サンライズ社がそれを独占している。移民当初は緑化計画があったが、大気が濃くなると太陽エネルギーが不足するとの理由で頓挫している。独立運動家たちは、火星を緑の惑星にすることを目指し、サンライズ社と敵対している。

clover 典型的な他惑星移民もののSF、という感じです。火星の人々は、植物というものを映画やTVのなかでしか知らないのです…。狭い居住区に押しこめられ、ビルの谷間だけを見て生まれ、死んでいく火星の人々。居住ドームの外はひとの住めない環境なのです。ちょっと長野まゆみさんの『テレヴィジョン・シティ』を思い出しました。

サンライズ社のパーティで、華子に睡眠薬を飲ませて眠らせるリム。そして、独立運動家たちが乱入し、サンライズ社の社長を拘束する。リムの父親は火星の都市の市長。リムに銃を渡して運動家たちを黙らせるように言うが、リムはその銃を父親に向ける。

clover リムが華子を眠らせて隠したのは、巻きこまれて怪我したりしないように。きっといまでも、リムは華子のことがすごく大事なんでしょう。リムは独立運動家の一員でした。市長の息子、というわりに下っ端な仕事(運転手とか)をしているのはなんでだったんだろう?

火星に緑をいっぱいにしてみせる、というリム。華子とふたりで居住ドームの外をあるく。見つめ合ってキスしようとするふたりだったが、宇宙服のヘルメットがふたりを隔てていた。

clover でも、本当にふたりを隔てているのはヘルメットなんかじゃなく…ということですね。「なにも言わずに旅立ってしまった男」と「待ちきれずに夫と子供をつくってしまった女」。華子さんは地球の人々に火星の人々の思いを伝えるために火星を後にします。旦那さんと息子が迎えに来てくれています。リムほどカッコ良くはないけれど、やさしそうな旦那さま…。火星でリムと過ごした時間は、華子さんの中で宝物になるのでしょう。…ところで、なんでこの章のタイトルが「華子」じゃなくて「華子さーん」なのか、読み終わってもよく分からなかったcoldsweats01 永年の謎は持ち越しだ。

chick第3章「まりあ」

まりあは宇宙飛行士訓練校にトップの成績で合格した。女性だからと例外扱いはしないで、ときっぱり。長かった髪も切る。ルームメイトになったタケルは、まりあがヨロイカブトをまとっているように感じる。ただひとりの女性訓練生として、プライドを高く持って…

clover いわゆる総合職のキャリア・ウーマンのようなものですね。タケルはなんとかまりあの肩肘はっているところをほぐそうとしますが、最初はなかなかまりあの心に入り込めません。

生理で訓練を休むまりあに、ノートを取ってあげたり…次第に打ち解けていくふたり。タケルに惹かれていくまりあ。訓練が別の班になったりすると寂しそうな顔を見せるようになる。そんなまりあに想いを告げるタケル。「ふたりはきっとむかし一つだったのよ…」とささやくまりあの声。

clover 恋をすると女は弱くなってしまうのかーgawk 残念だ、まりあ。しかし寮の同室同士で出来上がってしまったら、ふたりを阻むものは何一つ無いですね。性描写はないけれど、互いに寄りかかって座ったり、もういちゃいちゃし放題のふたり。

単独宇宙飛行訓練のさなか、タケルの宇宙船にまりあの宇宙船が突っ込んでいく。それが故意なのか事故なのかは分からない…。ふたりの身体は奇跡的に免疫拒絶反応のでない相性だった。筋肉・血管、そして脳。ふたりの身体を使ってひとりの人間を造りあげた医学。まりあはタケルと本当の一心同体になって生きていくことになる。

clover あまりいいエンディングではないです…gawk まりあの究極の依存は、タケルと文字通りひとつになることでした。凛としていた最初のまりあからは想像もつかないヘタレた結末です、と厳しすぎることを書いてみます。でも、そういう依存としかいいようのない愛って、何だか心ひかれる部分もあります

-----------------------------------------------------------
『私の保健室へおいで…』

千代子さんはアル中の美人保険医。生徒たちの悩みも気さくに訊いてくれる先生。ある日、大森望くんが「生理がないんです!」と駆け込んでくる。さすがに仰天する千代子だったが、生理がないのは望の彼女のせいらだった。どうも妊娠ではないらしい。勉強のしすぎによるストレス。

clover お…大森望って、偶然? それとも、SF漫画を描くくらいの人だからモデルにしたのかな? この当時大森望さんは活躍していたのかな?

望は医者になりたいという。しかも僻地の無医村に行きたいと。しかし千代子はそんな夢は甘いと切って捨てる。実は、千代子の元恋人も無医村で医者を始めたのだった。しかし、自分の腕も自信がなく、また予算がなくて医療機器も買えない。迷信もまかり通っている。理想と現実のギャップに疲れはてて、ある時彼は崖下に転落して生命を落とした。

clover たしかに僻地で理想を持ち続けて医者をするのは大変でしょうね…。しかし、迷信があるから医者がしんどい、というのは何だか新鮮な視点です。千代子は彼は自殺だったと思っていますが、望くんはきっぱりとそれを否定します。千代子さんと過ごした日々が不幸だったはずがないと…

望は志望通り医学部へ進む。せいらも(たぶん)同じ大学の短期看護学科へ。彼らはきっといつか、僻地で理想に燃えて働くのだろう。

clover 生徒の悩みを聞いてあげる側の先生が、生徒に励まされた話でした。千代子先生は相変わらずアル中で、消毒用アルコールを飲んで救急車で運ばれたりして過ごしています。でも、千代子さんの中で何かが変わったことは事実なのでしょう。

-----------------------------------------------------------
『胸さわぎの草むら』

三四郎と栄美は学生結婚している夫婦。ふたりとも植物学者を目指している。栄美のお腹の中の子どもが三四郎の最大の関心事。

clover 栄美さんの好き嫌いをなくそうとしたり、栄美さんのために栄養重視の重箱お弁当をつくってあげたり、こんなイクメン(死語?)がいたら羨ましいです。栄美さんの方がのんきな感じ。

栄美がくしゃみをしているのを見て、三四郎は原因であるセイタカアワダチソウを自宅周辺から刈り取ろうとする。帰化植物なんかに占領されない、美しい日本の自然を子供に見せたい、と言って…しかし、セイタカアワダチソウに鎌を向けると、小さな男の子が現れ、やめてほしいと泣きじゃくる。気が削がれて家に帰ると、栄美のそばにさっきの男の子が。自分はセイタカアワダチソウの精だと名乗る。

clover 花粉症の原因がセイタカアワダチソウというところに時代を感じます。昔はスギ花粉なんてマイナーだったからなー。栄美さんがくしゃみをするとき「はくち!はくち!」と吹き出しに書いてあったので「白痴? それはまあ三四郎さんはバカだけど」と勘違いしてしまいましたcoldsweats01

栄美のお腹の中の子は植物の子だよ、と少年は告げる。なぜそんなことに…と驚くふたりに、少年は「植物だって子孫を残したいんだ。僕たちはもうすぐ殺されるから」という。植物学者を目指しているあなたたちなら、と思ったから…とも。

clover わりとのほほんとしている栄美さんがカワユスconfident 象の子でもサルの子でも産まれてきたら面白いのにねえ、みたいに男の子と笑い合っていて、パニクる三四郎さんがあほみたいです。

セイタカアワダチソウの草原は、マンションを建てるために潰されてしまった。栄美には女の子が産まれ、ふたりは緑子と名づける。しかし、緑子は育つにつれてだんだんあの時の少年に似てくるのだった。

clover 緑子がほんとうにセイタカアワダチソウの子なのかどうかはお好みで…という感じです。そもそも21歳と19歳の大学生夫婦、っていうのも何だか現実離れしてるし(実際にそういう方が読んでいたらすみません)ふわっとしたファンタジーを読んだなー、という気持ち。清原なつのさんお得意の長い黒髪の栄美さんの儚げなうつくしさも印象に残りました。

|

« 【漫画】花ぶらんこゆれて… 第1巻:太刀掛秀子・著(集英社文庫)(1978年作品) | トップページ | 【漫画】花ぶらんこゆれて… 第2巻:太刀掛秀子・著(集英社文庫)(1978年作品) »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/89884/49412631

この記事へのトラックバック一覧です: 【漫画】真珠とり:清原なつの・著(りぼんマスコットコミックス)(1982年作品):

« 【漫画】花ぶらんこゆれて… 第1巻:太刀掛秀子・著(集英社文庫)(1978年作品) | トップページ | 【漫画】花ぶらんこゆれて… 第2巻:太刀掛秀子・著(集英社文庫)(1978年作品) »